ぜんぶ嘘

一人恋愛議事録

6.必要不可欠

 もし東京がなくなったら。もし東京がなくなったら、君と君と君と君と君と君ともうほとんど覚えてない誰かと二度と会うことのない彼らとの思い出も、その中にいたはずの私さえも綺麗さっぱりなくなって、でもきっとまた気がついたらどこかわからない場所にいて、また同じように歩いたり立ち止まったりしているんだと思う。

 そーゆー日常の崩壊は待てども待てどもやってこない。これは甘くて自堕落な夢だからだ。夢からなかなか醒めなくなった時期があった。覚醒する前にまた眠りの中に落ちてしまい、なかなか目を開けることができない。それでもやはり現実は続くのだが、夢ばかり見ていたらなんと現実が崩壊したので惰眠を貪ってる場合でもなくなった。

 

 ともすればこのくだらない日常は破壊するには惜しい平和といえるものなのかもしれない。人は失うことでその大切さを知るとかいうけど、知りたいからこそ壊したくなるというような知性の獣とでもいうべき人類は意外とありふれている。

 そーゆー茨の道に身を投じるのに傷一つない若い身体は持て余すものだが、若さは自然消滅するものだし、長く生きてれば傷の一つや二つや三つくらいはできるものだ。そうやって人生は少しずつ使い勝手がよくなっていく。どんなに傷つくことを恐れていても、生きているだけで失うものがあるこの世はなんて合理的なんでしょう?

 

 恋人と切れるとすごく忙しくなる。最近では人智を超えた領域に、次から次へと男を送り込んでくるお節介おばさんでもいるのではないかと思うようになってきた。まただめだったの?じゃあこれは?こういうのもいいんじゃない?って服でも選ぶみたいにさー。

 初心でうだつのあがらないロマンチストどもの寝言に付き合うのに飽きたので、ごく普通の社会的に脱落してない男を相手にしてみたけど、二言目には結婚家庭子供家族、もしくは穢れのない美しい純愛の夢みたいなものを宣うので、男というものを諦めて、私は私の思う通りに生きることにしました。

 

 きみと話していると若いときの情熱を思い出すんだよみたいなことを云う人間がいるが、それは私がモラトリアム女だからで、なにか特別な運命とか赤い糸とかそういうものではございません。若返りのために恋愛をすると破滅確率は80%オーバー。

 あまりにも安全な生活や人生に飽きて破壊行動に走る人間は、まあ止めたって無駄なので好きに破滅すればいいし、死ぬときは死ぬんだから早いか遅いかどちらかでしかない。でもそうやって危なっかしい人ほどどうせ死にきれないんだから、どのみち人生なんてそう簡単に変わらないのです。

 だから私なんぞを死神に見立てたりせずに一人で勝手に破滅してれば?って思うんですけど、それなりの代償を支払われるとなるとなんだか欲望に巻き込まれてしまうんだな。わかっちゃいるけどやめられない!やめられないし辞める気もそんなにないので甘んじて受け入れよう、さあ楽しいパーティーの始まりだ!(?!!??)