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ぜんぶ嘘

一人恋愛議事録

7.パンドラの箱

 私のインターネット依存は重症だ。子供のときは家庭がめちゃくちゃだったから一人で使うパソコンはくだらないコミュニケーションが発生しない絶好の遊び道具だった。中学生くらいになったら自分用のマシンを買ってもらえたので家にいる間は過熱してファンがうるさくなるまでクソでかい箱(白くてデカい懐かしのeMac)に噛り付いていた。

 

 それから去ること10年くらい、私は相変わらずパソコンとインターネットが大好きだ。大好きすぎてこの数年では人間関係までパソコンを介して形成するようになっていた。しかしながらインターネットは逆バベルの塔のようなもので、みんなが一つの言語をしゃべっているようでいて実は無数の言語を持つ人間の集まりであり、そのコミュニティはおそらくハナから崩壊しているようなものでした。

 そういう人間関係の不透明さはどこで形成したって同じだろみたいなことを吹っかけられそうだけどそんなことはない。たとえばよく言われる話だと女は容姿(は性的価値に直結している)の優劣が同じくらいの人間同士で群れるらしい。それは似た者同士にしか分かり得ない共通した目線があるからだ。

 

 この数年は社会の残りカスみたいな仕事をして糊口をしのいでいたが、これは非常に心が荒むことがわかった。一人で貧乏に暮らしていると元々悪い性格がもっと悪くなるというかイライラする。

 特にこの一年くらいは末期状態で、寂しいからと作った恋人とも大して何かが向上するような関係でもなく、壁のうすーいアパートのゴワゴワしたカーペットに座ってまずいコンビニ惣菜とか、箸入れが油でベタベタのラーメン屋のラーメンとか食ってて最悪だった。こういうのはごくたまに楽しむ非日常であって日常ではない。

 

 その頃のことはおそらく現実味がなさすぎてあまりよく覚えていない。食事のことくらいしか書けないのはどこかで遊んだ記憶もそれほどないからってのもあるし、セックスのときは大体脳が正常じゃないので覚えていようとしてもわりと難しい。

 っていうか交際歴が増えてくると付き合ったばかりというわけでもない目の前の相手のことを随分前に別れた男の名前と間違えて呼びそうになったりするし、みなさんはそういう経験ありませんか?ひとりずつ付き合っててもこうなのに、多頭飼いしてる人の頭ってよほどハッキリしているか、全員を同じ名前で呼んでいるのかもしれない。

 

 私が初めて寝た人間はほとんど赤の他人のような存在だったし、恋愛に夢をみるなどということは実際に男女交際などを経験してみるより前からなくなっていた。もともと男という生き物があまり好きではないのかもしれない。

 だもんで散々書いているように、私のからだが女の形をしているから男を欲するのだという理由以外でそれを求めることはなかったんだけど、そういう女に限って過激なロマンチストを引き寄せてしまうらしく、そいつらがみせてくる幻影に溺れてロマン主義かぶれになってみたが、人というものはそんなに簡単に変わらないらしい。

 

 ようするにもうずっと純愛という悪夢を見せられていたわけなんだけど、夢というものは無軌道なので正しく記憶しておくことは難しいようだ。なぜそんな夢をみたのかはよくわからないが寝る前に気紛れに読んだ小説とか映画とか、そういうものに影響されただけだろう。